Last Updated on 2025年12月19日 by 塾一郎
中学受験を控えたお子さんをお持ちの保護者の皆さん、塾選びでお悩みではありませんか。大手の集団塾に通わせているものの、成績が思うように伸びない、苦手科目がなかなか克服できないといった課題を感じている方も多いのではないでしょうか。
実は近年、一つの塾だけではなく複数の塾を併用するご家庭が増えています。大手集団塾で受験の基礎を固めながら、個別指導塾で苦手分野を強化したり、オンライン塾で効率的に学習したりと、それぞれの塾の強みを活かした学習スタイルが注目されているのです。
しかし、塾を併用するとなると、費用面の負担やお子さんのスケジュール管理、そして本当に効果があるのかといった不安もあります。やみくもに塾を増やしても、お子さんが疲れてしまっては本末転倒です。
この記事では、中学受験で塾を併用するメリットと具体的な活用方法、そして失敗しないための注意点まで、教育アドバイザーとしての経験をもとに詳しく解説していきます。お子さんに合った塾の組み合わせを見つけて、志望校合格への道を確実なものにしましょう。
中学受験で塾を併用する家庭が増えている理由
近年、中学受験を目指すご家庭の中で、複数の塾を併用するケースが増えています。以前は一つの塾に通うのが一般的でしたが、現在では大手集団塾をメインにしながら、個別指導塾やオンライン塾を組み合わせる家庭が珍しくありません。これは中学受験の競争が激化し、より細やかな学習サポートが必要になってきたことが背景にあります。お子さんの学力を最大限に引き出すために、塾併用という選択肢を検討されている保護者の方も多いのではないでしょうか。
大手集団塾だけでは補えない課題
SAPIX、四谷大塚、日能研、早稲田アカデミーといった大手集団塾は、中学受験対策の王道として多くの合格実績を誇っています。これらの塾では体系的なカリキュラムと質の高い教材、そして切磋琢磨できる環境が整っています。
しかし、集団授業という形式上、どうしても個々の生徒に合わせた細かな指導には限界があります。例えば、算数の特殊算でつまずいている生徒がいても、授業は予定通り進んでいきます。わからないところを質問したくても、クラスの人数が多いとなかなか質問できないお子さんもいます。
また、大手塾では宿題の量が膨大になることも珍しくありません。SAPIXの場合、週に1回の授業でも復習すべき内容が多く、すべてをこなすのが難しいと感じるご家庭も少なくありません。特に苦手科目がある場合、集団塾の授業だけでは理解が追いつかず、成績が伸び悩んでしまうことがあります。
さらに、志望校の過去問対策や記述問題の添削なども、集団塾だけでは十分な指導を受けられないケースがあります。こうした大手塾の弱点を補うために、個別指導塾やオンライン塾を併用する家庭が増えているのです。
個別指導塾との併用パターンが主流
塾併用の中で最も多いパターンが、大手集団塾と個別指導塾の組み合わせです。集団塾をメインの学習の場として活用しながら、苦手科目や理解が不十分な単元については個別指導でフォローするという方法です。
個別指導塾には、TOMAS、SS-1、個別教室のトライ、明光義塾など、さまざまな選択肢があります。中でも中学受験専門の個別指導塾は、大手塾のカリキュラムやテキストにも精通しているため、効率的なサポートが期待できます。
例えば、SAPIXに通いながらTOMASで算数だけを強化したり、四谷大塚の組分けテスト対策として週1回SS-1を利用したりするケースがあります。このように科目を絞って併用することで、費用を抑えながら効果的に学力向上を図ることができます。
また、最近ではオンライン個別指導も人気が高まっています。通塾の時間が不要で、夜遅い時間でも授業を受けられるため、忙しい中学受験生にとって便利な選択肢となっています。オンライン家庭教師のメガスタや、個別指導のWamなどが代表的なサービスです。
塾併用を始めるタイミング
塾併用を始める最適なタイミングは、お子さんの学習状況によって異なりますが、一般的には以下のような時期が多いです。
小学4年生の後半から5年生にかけては、中学受験の学習内容が本格化し、苦手科目が明確になってくる時期です。この段階で早めに個別指導を取り入れることで、苦手を克服しやすくなります。
小学5年生の夏以降は、成績が伸び悩んでいる場合や、特定の単元でつまずきが見られる場合に併用を検討するご家庭が増えます。5年生の学習内容は中学受験の土台となる重要な部分が多いため、この時期の遅れは取り戻しにくくなります。
小学6年生の春から夏にかけては、志望校対策を強化するために併用を始めるケースがあります。特に難関校を目指す場合、過去問演習や記述対策など、より専門的な指導が必要になってきます。
ただし、お子さんの体力や精神的な負担も考慮する必要があります。塾を増やすことで逆に疲れてしまい、学習効率が下がってしまっては本末転倒です。お子さんの様子をよく観察しながら、無理のない範囲で併用を検討することが大切です。
塾併用のメリットと期待できる効果
塾を併用することには、さまざまなメリットがあります。ただし、やみくもに塾を増やせば良いというわけではありません。それぞれの塾の特性を理解し、お子さんの課題に合わせて適切に組み合わせることで、初めて効果が現れます。ここでは、塾併用によって期待できる具体的なメリットをご紹介します。費用や時間の投資に見合った成果を得るためにも、これらのメリットを理解した上で併用を検討することが重要です。
苦手科目を集中的に克服できる
塾併用の最大のメリットは、苦手科目に集中的に取り組めることです。集団塾では全科目をバランスよく学習しますが、個別指導を併用することで、特に強化したい科目に時間を割くことができます。
例えば、算数が苦手なお子さんの場合、個別指導で割合や比、速さの問題といった重要単元を重点的に学習できます。集団塾の授業では理解しきれなかった部分を、マンツーマンでじっくり解説してもらうことで、確実に理解を深めることができます。
また、国語の記述問題が苦手な場合も、個別指導は非常に効果的です。記述問題は添削指導が不可欠ですが、集団塾では一人ひとりの答案を細かく見てもらう時間が限られています。個別指導では、答案の書き方から段落構成、必要な要素の入れ方まで、丁寧に指導を受けることができます。
さらに、理科や社会の暗記分野についても、個別指導で効率的な覚え方やテスト対策を学ぶことができます。特に理科の計算問題や、社会の記述問題など、苦手意識を持ちやすい分野を集中的に強化することで、総合的な成績アップにつながります。
学習ペースに合わせた指導が受けられる
お子さん一人ひとりの学習ペースに合わせた指導が受けられる点も、塾併用の大きなメリットです。集団塾では授業の進度が決まっているため、理解が不十分なまま次の単元に進んでしまうことがあります。
個別指導を併用することで、わかるまで繰り返し学習することができます。例えば、算数の「つるかめ算」でつまずいている場合、基礎から丁寧に学び直し、類題をたくさん解いて理解を定着させることができます。理解度に応じて進度を調整できるため、確実に力をつけることができます。
逆に、得意科目については先取り学習や発展的な内容に取り組むことも可能です。御三家や難関校を目指すお子さんの場合、集団塾のカリキュラムだけでは物足りないこともあります。個別指導で難問演習や志望校特化の対策を行うことで、さらなる学力向上が期待できます。
また、学習スタイルの違いにも対応できます。じっくり考えるタイプのお子さん、視覚的に理解するのが得意なお子さん、口頭での説明が必要なお子さんなど、それぞれの特性に合わせた指導方法を選択できることも個別指導の強みです。
モチベーション維持につながる
中学受験は長期戦です。小学4年生から始めると、約3年間にわたって勉強を続けなければなりません。その間、モチベーションを維持することは非常に重要な課題です。
集団塾では、成績順にクラス分けが行われることが多く、下位のクラスにいるとお子さんの自信喪失につながることがあります。一方、個別指導では、お子さんの小さな成長を講師が認めてくれるため、自己肯定感を保ちやすくなります。
「この単元ができるようになったね」「前回より解くスピードが速くなったよ」といった具体的な褒め言葉は、お子さんのやる気を引き出します。特に、集団塾で思うように成績が上がらず、勉強への意欲が低下しているお子さんにとって、個別指導は心の支えになることがあります。
また、個別指導の講師は学習計画の立案や進捗管理も手伝ってくれます。「次のテストまでにこの単元を完璧にしよう」「今週はこの問題集のこのページまで進めよう」といった具体的な目標設定により、お子さんは何をすべきか明確になり、迷わず学習に取り組めるようになります。
志望校対策を強化できる
中学受験において、志望校対策は合否を分ける重要な要素です。各学校には独自の出題傾向があり、その傾向に合わせた対策が必要になります。
例えば、開成中学は算数の図形問題や思考力を問う問題が多く出題されます。桜蔭中学は国語の記述問題の配点が高く、論理的な文章構成力が求められます。麻布中学は理科や社会でも記述問題が多く、単なる暗記では対応できません。
集団塾でも志望校別の特訓講座がありますが、人数が多いため個別の添削指導には限界があります。個別指導を併用することで、過去問の徹底分析と答案作成の個別指導を受けることができます。
特に6年生の秋以降は、志望校の過去問演習が中心となります。個別指導では、お子さんの答案を細かく分析し、「どこで点数を落としているか」「どのように答案を書けば得点できるか」を具体的に指導してもらえます。記述問題の採点基準や、部分点の取り方なども教えてもらえるため、実戦的な力が身につきます。
また、面接対策や適性検査対策が必要な学校を受験する場合も、個別指導は有効です。公立中高一貫校を併願する場合、適性検査特有の問題形式に慣れる必要がありますが、個別指導ならそうした特殊な対策にも対応してもらえます。
効果的な塾の併用パターンと選び方
塾併用を成功させるには、どの塾とどの塾を組み合わせるかが重要です。やみくもに塾を増やしても、お子さんの負担が増えるだけで効果が上がらないこともあります。ここでは、実際に多くのご家庭が実践している効果的な併用パターンをご紹介します。また、併用する塾を選ぶ際のポイントも解説しますので、お子さんに最適な組み合わせを見つける参考にしてください。それぞれの塾の特徴を理解し、目的に応じて使い分けることが成功の鍵となります。
SAPIX・四谷大塚など大手塾と個別指導の組み合わせ
最も一般的な併用パターンが、大手集団塾をメインにして、個別指導塾でサポートするという組み合わせです。それぞれの大手塾の特徴に応じた併用方法を見ていきましょう。
SAPIXとの併用では、膨大な宿題量と高度な授業内容をフォローするために個別指導を利用するケースが多いです。SAPIXのテキストは「デイリーサピックス」と呼ばれ、毎週新しい内容が配布されます。授業で学んだ内容を家庭で復習し、定着させることが求められますが、すべてをこなすのは大変です。個別指導では、SAPIXのテキストを使って復習のサポートや、テストの解き直しを行います。
四谷大塚との併用では、「予習シリーズ」の理解を深めるために個別指導を活用します。四谷大塚は予習型の授業スタイルのため、事前に内容を理解しておく必要があります。個別指導で予習のサポートを受けることで、授業での理解度が高まります。また、週テストや組分けテストの対策としても個別指導は有効です。
日能研との併用では、「本科教室」や「栄冠への道」といったテキストの演習問題を個別指導で解説してもらうケースが多いです。日能研は比較的ゆったりとしたペースで授業が進むため、難関校を目指す場合は個別指導で発展的な内容を学ぶこともあります。
早稲田アカデミーとの併用では、熱血指導で有名な早稲アカの授業についていくために、個別指導で基礎固めを行うケースがあります。また、NN(何がなんでも)志望校別コースと併せて、個別指導で過去問対策を強化する方法も効果的です。
科目別に塾を使い分ける方法
科目ごとに塾を使い分けるという方法も、効果的な併用パターンの一つです。各塾には得意分野があるため、科目に応じて最適な塾を選ぶことで、より質の高い指導を受けることができます。
例えば、算数に特化した塾としては、エルカミノやグノーブルが有名です。エルカミノは少人数制で思考力を重視した指導を行い、難関校の算数に強いと評判です。SAPIXの算数が難しく感じる場合、エルカミノで算数だけを学ぶという選択肢もあります。
国語に特化した指導を受けたい場合は、国語専門塾の「読書作文教室ことばの学校」や「論理エンジン」を導入している塾が効果的です。特に記述問題が苦手なお子さんには、記述添削に力を入れている個別指導塾がおすすめです。
理科・社会の強化には、暗記の効率化や理解を深めるための個別指導が有効です。理科の計算問題や実験問題、社会の記述問題など、苦手分野をピンポイントで強化できます。また、スタディサプリなどの映像授業を併用して、視覚的に理解を深める方法もあります。
科目別に塾を使い分ける際は、スケジュール管理が重要になります。週に何日塾に通うのか、宿題をこなす時間は確保できるのかを事前にしっかり検討しましょう。お子さんが無理なく通える範囲で組み合わせることが大切です。
オンライン塾との併用も選択肢に
近年、オンライン塾との併用も人気が高まっています。通塾時間が不要で、自宅で受講できるため、時間を有効活用できる点が大きなメリットです。
オンライン個別指導の代表的なサービスとしては、メガスタ、Wam、マナリンク、そらなどがあります。これらのサービスでは、中学受験に精通した講師がマンツーマンで指導してくれます。画面共有機能を使って問題を一緒に解いたり、デジタルホワイトボードで図を描きながら説明したりと、対面授業に近い形で学習できます。
映像授業も併用の選択肢として有効です。スタディサプリやZ会の映像授業は、わからない単元を繰り返し視聴できるため、復習に最適です。自分のペースで学習できるため、集団塾の授業で理解しきれなかった部分を補うのに役立ちます。
オンライン塾の費用は対面の個別指導より安いことが多く、経済的な負担を抑えながら併用できる点も魅力です。例えば、対面の個別指導が1コマ(80分)8,000円前後なのに対し、オンライン個別指導は5,000円前後で受講できるケースもあります。
ただし、オンライン授業には集中力の維持や通信環境の安定性といった課題もあります。お子さんがオンラインでも集中して学習できるかどうか、無料体験などで確認してから本格的に導入することをおすすめします。
オンライン塾、通信教育については、以下の記事も読まれています。
併用する塾の選び方のポイント
併用する塾を選ぶ際には、いくつかの重要なポイントがあります。まず、メインの塾のカリキュラムに精通しているかを確認しましょう。SAPIXや四谷大塚など、大手塾のテキストや指導方針を理解している個別指導塾なら、効率的なサポートが期待できます。
講師の質も重要な選定基準です。中学受験の指導経験が豊富か、志望校の合格実績があるか、お子さんとの相性は良いかなどを確認しましょう。多くの個別指導塾では体験授業を実施しているので、実際に授業を受けてから判断することをおすすめします。
通いやすさも考慮すべき点です。自宅や学校、メインの塾からの距離、営業時間、振替制度の有無などを確認しましょう。中学受験生は忙しいため、移動時間が長いと疲れてしまい、学習効率が下がる可能性があります。
費用対効果も慎重に検討する必要があります。個別指導は集団塾より費用が高額になるため、本当に必要な科目や単元に絞って利用することが大切です。「とりあえず全科目」ではなく、「算数の割合と比だけ」「国語の記述問題だけ」といった具体的な目的を持って利用しましょう。
最後に、塾との相性も大切です。指導方針や雰囲気がお子さんに合っているか、保護者とのコミュニケーションはしっかり取れるかなども確認しましょう。定期的に学習状況の報告があるか、相談しやすい環境かなども、長く続けるためには重要な要素です。
塾併用で失敗しないための注意点
塾の併用は適切に行えば大きな効果が期待できますが、一方で注意すべき点もあります。複数の塾に通うことで、お子さんの負担が増えすぎたり、費用が家計を圧迫したりするリスクがあります。また、塾同士の連携がうまくいかないと、学習効果が半減してしまうこともあります。ここでは、塾併用で失敗しないために押さえておきたい重要な注意点を解説します。これらのポイントを意識することで、塾併用のメリットを最大限に活かし、お子さんを無理なく志望校合格へと導くことができます。
子どもの負担が大きくなりすぎないように
塾併用を検討する際、最も注意すべきはお子さんの心身への負担です。複数の塾に通うことで、スケジュールが過密になり、疲労が蓄積してしまうことがあります。
小学生にとって、週に5日も6日も塾に通うのは大きな負担です。睡眠時間の確保は学習効率に直結するため、夜遅くまで勉強して睡眠不足になるようでは本末転倒です。文部科学省の調査によると、小学5〜6年生の適切な睡眠時間は9〜11時間とされています。塾のスケジュールを組む際は、この睡眠時間を確保できるかを確認しましょう。
また、自由時間や遊びの時間も子どもの成長には必要です。友達と遊んだり、好きなことをしたりする時間が全くないと、ストレスが溜まり、かえって学習意欲が低下してしまいます。週に1日は塾のない日を作るなど、息抜きの時間を意識的に設けることが大切です。
お子さんの様子を注意深く観察し、疲れのサインを見逃さないようにしましょう。朝起きられない、食欲がない、イライラしやすい、勉強に集中できないといった症状が見られたら、スケジュールを見直す必要があります。無理をして体調を崩してしまっては、受験どころではなくなってしまいます。
併用を始める前に、お子さん自身の意見も聞いてあげましょう。「もっと算数を頑張りたい」という前向きな気持ちがあれば、多少忙しくても乗り越えられますが、親の一方的な判断で塾を増やすと、お子さんの反発を招くこともあります。
費用面の計画をしっかり立てる
塾併用には、当然ながら経済的な負担が伴います。大手集団塾の月謝に加えて個別指導の費用が上乗せされるため、年間の教育費が大幅に増加します。
一般的に、大手集団塾の月謝は学年が上がるにつれて高くなります。小学4年生で月3万円程度、5年生で月4〜5万円、6年生で月5〜7万円程度が相場です。これに加えて、個別指導を週1回(月4回)利用すると、月3〜4万円程度が追加でかかります。つまり、月に8〜11万円程度の塾代が必要になる計算です。
さらに、夏期講習や冬期講習、正月特訓、GW特訓などの季節講習費用も別途かかります。6年生の夏期講習だけで20〜30万円かかることも珍しくありません。年間総額では、150〜250万円程度が中学受験にかかる費用の目安となります。
このような高額な費用を無理なく支払うためには、事前の資金計画が不可欠です。中学受験を決めた時点で、6年生までにいくら必要になるかを試算し、計画的に貯蓄しておくことが大切です。また、併用する塾の数や頻度を調整することで、費用をコントロールすることも可能です。
費用対効果を高めるためには、目的を明確にすることが重要です。「とりあえず個別指導も受けておこう」ではなく、「算数の速さの問題を完璧にするために、3か月間集中的に個別指導を利用する」といった具体的な目標を持つことで、無駄な出費を抑えられます。
塾同士の連携と情報共有
塾を併用する際、塾同士の連携がうまくいっていないと、学習効果が半減してしまいます。それぞれの塾が独立して指導を行うのではなく、情報を共有しながら連携することが理想的です。
個別指導塾を選ぶ際は、メインの塾のカリキュラムを理解しているところを選ぶことが大切です。例えば、SAPIXに通っている場合、SAPIXのテキストや進度を把握している個別指導塾なら、効率的なサポートが期待できます。中学受験専門の個別指導塾は、各大手塾のカリキュラムに精通していることが多いです。
また、保護者が橋渡し役となることも重要です。メインの塾でのテスト結果や苦手な単元を個別指導の先生に伝えたり、個別指導での学習進度をメインの塾に報告したりすることで、両方の塾が協力してお子さんをサポートできる体制を作りましょう。
ただし、塾によっては他塾との併用を好ましく思わないところもあります。特に大手塾の中には、「うちの塾だけで十分」という方針のところもあります。併用を始める前に、メインの塾の担任の先生に相談し、理解を得ておくとスムーズです。
宿題の量の調整も重要なポイントです。メインの塾の宿題と個別指導の宿題が重なると、お子さんが消化しきれなくなります。個別指導では、メインの塾の宿題の優先順位を考慮しながら、無理のない範囲で課題を出してもらうよう相談しましょう。
スケジュール管理のコツ
塾を併用すると、スケジュール管理が複雑になります。効率的な時間管理ができないと、お子さんの負担が増えるだけでなく、学習効果も上がりません。
まず、週間スケジュール表を作成しましょう。塾の授業、宿題の時間、自主学習の時間、休息の時間などを視覚化することで、無理のないスケジュールかどうかを確認できます。Googleカレンダーやスケジュール管理アプリを活用するのも良い方法です。
移動時間の最小化も重要です。メインの塾から個別指導塾が遠いと、移動だけで疲れてしまいます。可能であれば、同じエリアにある塾を選んだり、オンライン個別指導を活用したりすることで、移動時間を削減できます。
優先順位をつけることも大切です。すべての宿題を完璧にこなそうとすると時間が足りなくなります。メインの塾の重要な課題を優先し、個別指導では特に苦手な部分に絞って取り組むなど、メリハリをつけた学習計画を立てましょう。
また、定期的な見直しも必要です。お子さんの学力や体調の変化に応じて、スケジュールを柔軟に調整することが大切です。例えば、テスト前は個別指導の頻度を増やし、テスト後は少し休息を取るといった調整も有効です。最終的には、お子さんが無理なく続けられるスケジュールを見つけることが、塾併用成功の鍵となります。
学年別・状況別の塾併用の進め方
塾併用の進め方は、お子さんの学年や学力状況によって異なります。小学4年生で始める場合と6年生の直前期に始める場合では、目的も方法も大きく変わってきます。また、成績上位層と中位層、志望校のレベルによっても、最適な併用方法は異なります。ここでは、学年別・状況別に具体的な併用の進め方をご紹介します。お子さんの現在の状況に合わせて、最も効果的な併用方法を選択してください。早い段階から計画的に進めることで、無理なく志望校合格を目指すことができます。
小学4年生からの併用スタート
小学4年生は、中学受験の学習が本格的に始まる時期です。この段階では、まだ学習習慣を確立することが最優先です。無理に塾を併用する必要はありませんが、メインの塾の授業についていくのが難しい場合は、早めに個別指導を検討しても良いでしょう。
4年生で併用を始める場合、週1回程度の個別指導から始めるのが無難です。算数の基礎が不安な場合、計算力や図形の基礎を個別指導で固めることで、5年生以降の学習がスムーズになります。特に、分数や小数の計算は中学受験の土台となるため、この時期に確実に身につけておくことが重要です。
また、4年生のうちから国語の読解力を伸ばしておくことも大切です。読解力は一朝一夕には身につかないため、時間をかけて育てる必要があります。個別指導で文章の読み方や要約の仕方を学ぶことで、5年生以降の難解な文章にも対応できる力がつきます。
4年生の段階では、勉強を嫌いにさせないことが何より大切です。塾を増やすことでお子さんが勉強嫌いになってしまっては意味がありません。お子さんの様子を見ながら、無理のない範囲で併用を検討しましょう。
小学5年生での併用強化
小学5年生は、中学受験の学習内容が最も充実する時期です。算数では割合や比、速さといった重要単元を学び、理科では物理や化学の計算問題が増えます。この時期につまずくと、6年生での挽回が難しくなるため、併用を本格的に検討するご家庭が多いです。
5年生で併用する場合、苦手科目に絞るのが効果的です。例えば、算数の「割合と比」でつまずいている場合、この単元を集中的に個別指導で学習します。割合と比は中学受験算数の中核をなす重要単元であり、ここを理解しないと6年生の受験算数についていけません。
また、5年生の夏休みは、苦手を克服する絶好の機会です。メインの塾の夏期講習に加えて、個別指導で弱点補強を行うことで、2学期からの学習をスムーズに進められます。ただし、夏休みは長時間勉強することになるため、お子さんの体調管理には十分注意しましょう。
組分けテストやマンスリーテストの成績が伸び悩んでいる場合も、個別指導の導入を検討するタイミングです。テストの解き直しを個別指導で行うことで、自分の弱点が明確になり、効率的に学力を伸ばすことができます。特に、SAPIXの場合はテストの頻度が高いため、テスト対策としての個別指導は非常に有効です。
小学6年生の直前期対策
小学6年生になると、いよいよ受験本番が近づいてきます。この時期の併用は、志望校対策が中心となります。特に秋以降は過去問演習が本格化するため、個別指導での過去問添削が非常に効果的です。
6年生の春から夏にかけては、まだ基礎固めの時間があります。この時期に苦手科目や弱点単元を個別指導で徹底的に強化しておくことで、秋以降の過去問演習がスムーズに進みます。特に、算数の特殊算や国語の記述問題など、時間をかけて習得する必要がある分野は、この時期に集中的に取り組みましょう。
秋以降は、志望校の過去問対策が最優先となります。個別指導では、お子さんの答案を細かく分析し、「どこで点数を落としているか」「どのように書けば得点できるか」を具体的に指導してもらえます。特に、開成・麻布・桜蔭といった御三家や、早稲田・慶應などの難関校を目指す場合、学校ごとの出題傾向に合わせた対策が不可欠です。
6年生の冬休みから入試直前は、最後の追い込み期間です。この時期は、新しいことを学ぶのではなく、これまで学んだことを確実に定着させることが重要です。個別指導では、頻出問題の最終確認や、苦手分野の総復習を行います。また、メンタル面のサポートも大切です。不安を抱えるお子さんに寄り添い、自信を持って本番に臨めるようサポートしましょう。
成績や志望校に応じた併用プラン
塾併用の方法は、お子さんの現在の成績や志望校のレベルによっても変わってきます。それぞれの状況に応じた併用プランを考えてみましょう。
難関校を目指す成績上位層の場合、メインの塾の授業だけでは物足りないこともあります。この場合、個別指導で発展的な内容や難問演習を行うことが効果的です。例えば、開成中学の算数は非常に高度な思考力を要求されるため、個別指導で過去問以上のレベルの問題に取り組むことも有益です。
中堅校を目指す中位層の場合、苦手科目を克服することが合格への近道です。個別指導で基礎の徹底と弱点補強に集中しましょう。特に、算数の基本問題を確実に得点できるようにすることが重要です。中堅校の入試では、難問よりも基本〜標準レベルの問題を確実に解ける力が求められます。
成績が伸び悩んでいる層の場合、まずは学習習慣の確立が最優先です。個別指導では、勉強のやり方や計画の立て方から指導してもらうことが効果的です。また、お子さんの理解度に合わせて、基礎からじっくり学び直すことも必要です。焦らず、着実にステップアップしていくことが大切です。
公立中高一貫校を併願する場合、適性検査対策も必要になります。適性検査は私立中学の入試とは問題形式が大きく異なるため、専門の対策が必要です。個別指導で適性検査特有の問題に慣れることで、併願校の合格可能性を高めることができます。
塾併用の費用相場と家計への影響
塾併用を検討する際、避けて通れないのが費用の問題です。中学受験にかかる費用は年々高額化しており、複数の塾を併用すればさらに負担は増します。しかし、費用を正しく理解し、計画的に準備することで、無理なく併用を実現することは可能です。ここでは、塾併用にかかる具体的な費用相場をご紹介し、家計への影響を最小限に抑えながら効果を最大化する方法を解説します。費用対効果を意識しながら、お子さんにとって最適な学習環境を整えることが大切です。
大手塾と個別指導の月額費用
大手集団塾の月額費用は、学年によって大きく異なります。小学4年生では月額2万5千円〜3万5千円程度、小学5年生では月額4万円〜5万5千円程度、小学6年生では月額5万円〜7万円程度が相場です。ただし、これは通常授業のみの費用で、テスト代や教材費は別途かかります。
例えば、SAPIXの場合、6年生の月謝は約6万円〜7万円で、これに加えて季節講習費が別途必要です。四谷大塚は月額5万円〜6万円程度、日能研は月額4万5千円〜6万円程度、早稲田アカデミーは月額5万円〜6万5千円程度が目安となります。
個別指導塾の費用は、指導形態や講師のレベルによって大きく変わります。1対1の完全個別指導の場合、1コマ(80分〜90分)あたり7千円〜1万円程度が相場です。週1回(月4回)利用すると、月額3万円〜4万円程度になります。
1対2の個別指導の場合は、1コマあたり5千円〜7千円程度とやや安くなります。ただし、講師の注意が分散するため、完全個別指導ほどの効果は期待できないこともあります。お子さんの性格や学習状況に応じて選択しましょう。
中学受験専門の個別指導塾は、一般的な個別指導塾よりも費用が高めです。例えば、TOMASは1コマ(80分)あたり8千円〜1万円程度、SS-1は1コマ(80分)あたり9千円〜1万2千円程度が目安です。これらの塾は中学受験に特化した指導を行うため、費用は高いですが効果も期待できます。
オンライン個別指導は、対面の個別指導よりも費用が抑えられる傾向があります。1コマあたり4千円〜7千円程度で、月額2万円〜3万円程度で利用できるサービスもあります。通塾時間が不要で費用も抑えられるため、コストパフォーマンスを重視する場合は検討する価値があります。
年間でかかる総額の目安
中学受験で塾を併用する場合、年間総額はどのくらいになるのでしょうか。学年ごとに試算してみましょう。
小学4年生の場合、大手塾の年間費用が約40万円〜50万円、個別指導を週1回利用すると年間約35万円〜45万円が追加されます。合計で年間75万円〜95万円程度が目安となります。
小学5年生になると、大手塾の費用が年間約60万円〜80万円に増え、個別指導も同様に年間約35万円〜45万円かかります。さらに夏期講習や冬期講習などの季節講習費が20万円〜30万円程度追加されるため、合計で年間115万円〜155万円程度となります。
小学6年生は最も費用がかかる年です。大手塾の通常授業で年間約70万円〜90万円、個別指導で年間約40万円〜50万円、季節講習や志望校別特訓で40万円〜60万円程度かかります。さらに、過去問や模試の費用、受験料なども加わり、合計で年間150万円〜200万円程度が必要になることもあります。
つまり、小学4年生から6年生までの3年間の総額は、塾を併用する場合、340万円〜450万円程度になる計算です。これに加えて、受験当日の交通費や宿泊費、入学後の学費なども考慮する必要があります。
この金額は決して小さくありません。しかし、計画的に準備することで、無理なく支払うことは可能です。中学受験を決めた時点から、毎月一定額を積み立てておくことが大切です。例えば、3年間で400万円が必要な場合、月々約11万円を貯蓄しておく必要があります。
費用対効果を高める工夫
塾併用の費用は高額ですが、工夫次第で費用対効果を高めることは可能です。いくつかの方法をご紹介しましょう。
まず、目的を明確にすることが重要です。「何となく不安だから個別指導も」ではなく、「算数の速さの問題を3か月で完璧にする」といった具体的な目標を持つことで、無駄な出費を防げます。目標達成後は一旦個別指導を休止し、また必要になったら再開するという使い方も効果的です。
科目を絞ることも費用削減につながります。全科目を個別指導で受けるのではなく、最も苦手な1科目だけに絞ることで、費用を大幅に抑えられます。例えば、算数だけを個別指導で強化し、他の科目は自宅学習や集団塾でカバーする方法です。
頻度を調整することも有効です。毎週通うのではなく、テスト前だけ利用したり、隔週で通ったりすることで、費用を抑えながらも必要なサポートを受けることができます。また、夏期講習などの長期休暇中は個別指導を増やし、通常期は減らすといった柔軟な使い方も可能です。
オンライン指導の活用も費用削減の有効な手段です。対面の個別指導の半額程度で利用できるオンライン指導は、移動時間も節約できるため、コストパフォーマンスに優れています。お子さんがオンラインでも集中できるタイプなら、積極的に活用しましょう。
兄弟割引や紹介割引などの制度を利用することも忘れずに。多くの塾では、兄弟が同時に通う場合の割引や、友人を紹介した場合の特典があります。また、長期契約や一括払いで割引が適用される塾もあるため、事前に確認しておきましょう。
奨学金制度や特待生制度の活用
費用負担を軽減する方法として、奨学金制度や特待生制度の活用も検討できます。優秀な成績を収めているお子さんの場合、これらの制度を利用することで、大幅に費用を抑えることが可能です。
多くの大手塾では、成績優秀者向けの特待生制度を設けています。例えば、SAPIXやサピックスでは、入室テストで優秀な成績を収めた生徒や、クラス分けテストで上位クラスに在籍する生徒に対して、授業料の減免や免除を行うことがあります。早稲田アカデミーでも、特待生制度があり、成績上位者は授業料が半額または無料になる場合があります。
また、模試の成績によって特待生に選ばれることもあります。四谷大塚の全国統一小学生テストや、日能研の全国公開模試などで上位の成績を収めると、特待生として授業料の減免を受けられることがあります。これらの模試は無料で受験できるため、積極的に挑戦してみる価値があります。
個別指導塾でも、成績保証制度を設けているところがあります。一定期間内に成績が上がらなかった場合、授業料を返金したり、無料で追加授業を提供したりする制度です。こうした制度がある塾を選ぶことで、リスクを抑えながら個別指導を利用できます。
さらに、中学受験後の話にはなりますが、私立中学校の奨学金制度も視野に入れておきましょう。多くの私立中学では、入学試験の成績優秀者や、経済的な支援が必要な家庭に対して、授業料の減免や奨学金を提供しています。志望校を選ぶ際は、こうした制度の有無も確認しておくと良いでしょう。
費用の問題は悩ましいですが、適切に計画し、利用できる制度を最大限活用することで、お子さんに最適な学習環境を整えることができます。
まとめ:塾併用を成功させるための5つのポイント
中学受験における塾併用について、詳しくご説明してきました。最後に、塾併用を成功させるための重要なポイントを5つにまとめます。
1. 明確な目的を持つこと
塾を併用する際は、必ず明確な目的を持ちましょう。「算数の速さの問題を克服したい」「国語の記述問題で得点できるようになりたい」といった具体的な目標があることで、どの塾をどのように利用すべきかが明確になります。漠然とした不安から塾を増やすのではなく、お子さんの課題を正確に把握した上で併用を検討することが大切です。
2. お子さんの負担を最優先に考える
複数の塾に通うことで、お子さんの心身への負担が増えることを忘れてはいけません。睡眠時間の確保、休息の時間、友達と遊ぶ時間など、子どもらしい生活を維持することも重要です。お子さんの様子を注意深く観察し、疲れのサインが見られたら、迷わずスケジュールを見直しましょう。健康あってこその受験です。
3. 費用対効果を意識する
塾併用には大きな費用がかかります。年間で100万円以上の教育費が必要になることも珍しくありません。だからこそ、費用対効果を意識することが重要です。科目を絞る、頻度を調整する、オンライン指導を活用するなど、工夫次第で費用を抑えながら効果を高めることができます。事前にしっかりと資金計画を立て、無理のない範囲で併用を進めましょう。
4. 塾同士の連携を図る
複数の塾を利用する場合、それぞれの塾が独立して指導するのではなく、情報を共有しながら連携することが理想的です。保護者が橋渡し役となり、メインの塾でのテスト結果や学習状況を個別指導の先生に伝えることで、より効果的な指導が受けられます。また、宿題の量が過多にならないよう、塾間で調整することも大切です。
5. 柔軟に見直す姿勢を持つ
一度決めた併用パターンに固執せず、お子さんの学力や状況の変化に応じて柔軟に見直す姿勢が大切です。成績が上がってきたら個別指導の頻度を減らしたり、新たな課題が見つかったら科目を変更したりと、常に最適な状態を保つよう調整しましょう。定期的にお子さんや塾の先生と相談しながら、ベストな学習環境を作り続けることが成功への鍵です。
中学受験は長い道のりです。塾併用という選択肢を上手に活用することで、お子さんの可能性を最大限に引き出すことができます。この記事でご紹介した内容を参考に、お子さんに合った最適な学習スタイルを見つけてください。焦らず、着実に、そして何よりお子さんの笑顔を大切にしながら、志望校合格を目指していきましょう。
